今年もあと2か月となりました。
快適な職場環境づくりのために今年の締めくくりとして、職場の備品点検や
職場巡回などもこの時期頻繁に行われます。私も、年に何度か様々な職場の
巡回に同行します。働く人のこころをサポートする産業カウンセラーの視点で
巡回すると、職場の人間関係などの実態が見えてきます。
今回は、整理整頓と職場のメンタルヘルスについてお話ししたいと思います。
職場のメンタルヘルスに「効く」職場の整理整頓
「職場のメンタルヘルスの問題を何とかしたい」「ストレスの少ない、生き生きと働ける職場を作りたい」という声をよく聞きます。しかし、なかなかいい方法が見つからず、みなさん苦労しているようです。
職場のストレスを軽減するための方法はいくつもありますが、中でも、最も効果的な方法のひとつが「職場の整理整頓」だと言ったら、みなさん驚かれるでしょうか。
雑然とした職場で起こること
人間関係悪化
整理整頓ができていない職場では
? 何がどこにあるのかわからず、仕事が進みにくい
? 作業場所が狭くて仕事がしづらい
? 共有の文具がいつも行方不明になっている
? 書類を回覧しているうちに、どこにいったかわからなくなる
? 大事な情報が見つからない、うまく共有できない
? 担当者が変わると、何がどこにあるかわからなくなる
? 埃がたまって空気が悪い など…
仕事がスムーズに進まず、イライラがつのり、人間関係までぎくしゃくすることがあります。
ストレスチェック実施者として気づいたこと
業務内容が同じだからと言って、職員のストレス傾向は同じではないということです。
明らかに忙しいのに休職者がいない職場と、それほど忙しくないのに休職者が続出する職場があります。こうしたことはなぜ起きるのかと考え続けてきましたが、休職者が少ない職場には、ある1つの共通点がありました。
休職者が少ない職場の共通点とは、
職場内の整理整頓や掃除がきちんと行き届いているということです。
書類や資料が棚にきちんと並び、備品も必要なものがいつでも取り出せるように然るべき場所に収まっていて、床にゴミ一つ落ちておらず、全体的に清潔感のある雰囲気が漂っている。そんな職場では不思議と休職者が少ないようなのです。
「割れ窓理論」という考え方をご存じですか?
建物の窓が壊れたまま放置されると、その建物に対し誰も注意を払っていない
印象を与え、やがて他の窓も壊されてしまう、という考えです。
つまり、乱れた状態が放置されていると、そこにいる人や訪れた人は、
「この場所は防犯に配慮していない」と感じ、「犯罪を起こしても大丈夫ではないか」
と考える。結果、犯罪の発生件数が増えてしまうということです。
ディズニーランドやディズニーシーでは、パーク内のささいな傷をおろそかにせず、ペンキの塗り直しや破損箇所の修繕を頻繁に行うことで、従業員だけでなく、来客のマナーも向上させることに成功しています。
きれいな環境が保たれていると、人は自然と、「きれいに保たなくてはいけない」と考えるものらしいのです。
かつて業績の悪化していたアップル社にスティーブ・ジョブズが復帰した時にも、
この「割れ窓理論」を掲げて、会社改革が行われたそうです。
ジョブス氏に「まるで学級崩壊のような会社崩壊だった」と言わしめた悲惨な状況を
救うには、「職場の環境を徹底的に変える」ことが必要でした。当時のアップルの
会社改革の第一歩は、雑然としたオフィスを清潔感のあるオフィスへの改善だったと
言われています。
清潔感がなく、乱雑な環境下では、仕事の完成度に甘さが表れ、何かにつけて「これでいいや」と許容してしまう空気が出てきやすく、果ては、不正がはびこりやすくなるとも言われていいます。
乱れたデスク、必要な資料をすぐに見つけられない棚、汚れた床、溜まった埃、それらは職場環境が「割れ窓」となっているメッセージです。
あなたの職場はこのような割れ窓状態になっていませんか?
職員の士気、ひいては作業能率、人間関係まで悪化させてしまう大事なサインを、
見過ごしてはいませんか?
職場内の整理整頓や掃除は、比較的簡単に取り掛かれるはずです。
これこそ、職員のメンタルヘルス対策として大きな効果が期待できる第一歩です。
まずは一歩、できるところから取り組んでみませんか?
オフィスの整理整頓の目標は
何がどこにあるのか、みんなが分かるようにすること
? 共有管理/個人管理/私物を区別すること
? 作業場所/保管場所/一時保管場所を区別すること
私物の管理があいまいだと、人間関係がいびつになる
特に注意が必要なのが「私物の管理」です。
例えば、ある人の私物が共有場所にいつも置かれていたり、私物ロッカーの割り当てがあいまいだったりすると、そこに「見えない序列」が生まれ、不公平やいじめの温床になることもあります。私物を置く場所は、全員に公平に確保しましょう。
※来庁者が使用する公共部分(トイレ、エレベーター回り)が雑然としていると、クレームの原因となり、
住民との信頼関係が損なわれかねません。
仕事ができる人の整理整頓のやり方
仕事環境の整備を実践するためには、以下の4つのステップがおすすめです。
①すべての物を取り出す
②「いるもの」と「いらないもの」に区別する
③「いらないもの」を捨てる
④「いるもの」を適切な場所に置く
【STEP1】すべてのものを取り出す
仕事ができる人の整理整頓の1つ目のステップは、すべてのものを取り出すことです。
すべてのものを取り出せば、全体の分量が分かるため片付けの成果が目に見え、挫折せずに作業を進めることが可能です。また、すべてのものを並べれば、この次のステップで行う「いるものといらないものに区別する」がしやすくなります。
【STEP2】「いるもの」と「いらないもの」に区別する
仕事ができる人の整理整頓の2つ目のステップは、取り出したものを「いるもの」と「いらないもの」に区別することです。目の前に並べたものに目を通して、必要なものかどうかを判断していきます。
いるものといらないものの区別で重要な点は、分ける基準を明確に決めることです。
基準が曖昧だと迷いが生じ、必要以上に時間がかかってしまいます。
【STEP3】「いらないもの」を捨てる
仕事ができる人の整理整頓の3つ目のステップは、「いらないもの」を捨てることです。
いらないと判断したものの中で、すでに使えなくなった道具や保存の必要性がない
書類などは廃棄しましょう。
ただし、個人情報が記載された書類や資料はそのまま廃棄せず、シュレッダーにかけましょう。
【STEP4】「いるもの」を適切な場所に置く
仕事ができる人の整理整頓の4つ目のステップは、「いるもの」を適切な場所に置くことです。仕事に必要な資料や道具を、取り出しやすい場所に配置しましょう。
使用頻度の高い備品は手元に近い場所に置くと、仕事の生産性が高まります。
職場のメンバーと共有して使用するものは、全員が見つけやすく取り出しやすい保管場所を決めましょう。
仕事の整理整頓のコツは習慣化すること
仕事の整理整頓を成功させるコツは、片付けを習慣化することです。仕事ができる人は整理整頓のための行動を習慣的に実行しています。
習慣化すべき主な行動は2つです。
また、職場環境の整理整頓は定期的に行う必要があります。毎週の決まった曜日や、1日の終わりなどに整理整頓のための時間を設けましょう。忘れずに取り組めるタイミングを決め、定期的に実行することで整理整頓を習慣化できます。